闇の存在・魑魅魍魎が侵食しつつある魔都・東京。 
      人魔の間で太古より守られてきた「互いに不干渉」という暗黙のルールも、人が外道に堕してからは綻びを見せはじめ、人魔結託した●罪組織や企業が暗躍していた。 
      しかし正道を歩まんとする人々も無力ではなかった。 
      時の政府は人の身で「魔」に対抗できる集団・忍のものたちからなる退魔忍を組織し、人魔外道の悪に対抗したのだ。
      新月の闇夜――― 
       「ようこそ。政府の犬、対魔忍-アサギ」 
       ゴーストタウンと化した深夜の都心。 
        ビルとビルの間にある長細い人工公園、そこに立つ女二人。それを取り囲むような人影が数百。 
        一方――主人公・アサギは人魔外道を葬る政府の闇の機関-対魔忍のくノ一。一騎当千で知られる対魔忍の中でも最強の対魔忍として、敵対する人魔ともに恐れられていた。 
        一方――傭兵を集めて朧忍軍と称し、魑魅魍魎と結託する多国籍複合企業体・ノマドに与するくノ一。ノマドの日本における勢力拡大に大きな貢献をしてきた、かつては甲賀忍者の一派の頭領。 
        そして 数百の影は彼女が率いる朧忍軍の忍者たちだ。 
        つまりアサギは、数百の邪まなる刃に包囲され、絶対絶命の危機にあった。 
      「朧忍軍の頭領、朧か? お前の悪行もこれまでだ」 
        「その通り。だがお前が私を突き止めたのではない! 私がお前を誘い出したのだ」 
        「………。甲賀忍者でありながら魑魅魍魎に与するとは恥を知れ」 
        「はん! 忍者がお上に仕えるなどいつの話! 
         対魔忍強しと言えども一人一人周到に抹殺してくれるわ」 
        「………」 
        「それともその豊満な肉体、弄り尽くしてからにしてやろうか!?」 
        「……死して先祖に詫びるが良い……」 
        「この人数で何を! バカめ!」 
      アサギが数百の剣陣に哀れ倒されるかと思ったその刹那、闇に立ちはだかる朧忍軍数百名、それぞれの眼前にアサギが立ちはだかった。 
        同時に――― 
      「忍法・殺陣華」 
      数百の血飛沫が同時にあがる。 
        無論、朧も肩口から両断されている。 
        そして数百のアサギの分身が一所に戻り、一つとなって、血で汚れた剣を払い鞘に戻す。 
      「これがお前の忍法……!? 不覚……」 
        「私の前では多数は無意味。かえって慢心が死を招く」 
      そういうとアサギは朧の首をはねてトドメをさす。 
        こうして彼女の任務は完了した。 
       ―――しかし、それはこの後に起こる壮絶な戦いの序章でしかなかった。人魔外道の魑魅魍魎が、気高きくノ一の心に、美しい肢体にその淫獄の魔手を忍び寄せる……!! 
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